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ほかならぬ人へ 白石一文著 [イナモトが読んだ本]

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表題作の「ほかならぬ人へ」と「かけがえのない人へ」の2作収録。

「ほかならぬ人へ」

名家の生まれのお坊ちゃまなのにコンプレックスだらけの明生。妻のなずなは「どうしても自分には忘れられない人がいる」と自分の感情のままに行動する。明生と結婚したのに身勝手極まりないし、大方の人の同意は得られないだろうと思います。

でも誰が自分にとっての真の相手か?って頭で考えて分かることではないんだろうなぁ。明生の言い分も、なずなの言うことも分かる。矛盾してるけど・・・。人を好きになることに「正しい」とか「間違い」とかないんだなと思いました。

気風がよくて明朗、豪快な明生の女性上司、東海さん。好きです。色々な経験をしたからこその東海さんの言葉も心に刺さります。
「結婚は一度はしてみるもの。でも、長く続けるかどうかは人それぞれでいいんじゃないか」
「生きてたら色々あるよ。でもね、何年か経ったらどんなことでも大したことじゃなかったって分かるから。人間はさ、毎回自分に裏切られながら生きていくしかないんだよ」
「自分が誰かなんて選べない。自分の責任じゃない(顔が不細工とか)。そういう自分に慣れさえすればあんまり悩まなくて済むようになる」

うーん、納得。


「かけがえのない人へ」

こちらの作品の主人公は女性です。婚約者がいるけど昔の男とも別れることができない、みはる。
普通なら感情移入できないキャラだと思いますけど、私はこういう割り切れない気持ちも人間にはアリかなぁと思うなー。

黒木みたいな天衣無縫で豪快で、でも繊細な男・・・最近はいないかも。「結婚なんてのはとりあえず今の自分でマルと思ってるときにするもんだ。何かを変えようとか違う人間になろうとか思ってしちまうとろくなことはない」確かに。

みはるは「誰と結婚したって別にたいして代わり映えしない」という考えを持っている冷めた女の子だけど、私は結婚に夢や希望ばかり抱いている女の子もどうかなぁ、と思います。みはるはちょっとクール過ぎるけど。最後にみはるは、誰が自分にとってかけがえのない人だったか、はっきり分かったんだと思いたい・・・けど、やるせない。

白石さんの作品は何作か読みましたが、ひっかかりなく、スラスラ読みやすくて私は好きです。白石さんの言葉は胸に響く言葉が多いです。2作品のテーマは愛するべき真の相手はどこにいるのだろう?という永遠の問いかけ。みんな必ずしもベストな相手と出会って結婚しているとは言えないかもしれない。もし出会えたとしたら、それはそれだけで奇跡的なことなのかも。

「見つめ合うべき2人がちゃんと見つめ合うという至極当然」のことが実はすっごく難しいことなんだよな・・・。真実の相手に巡り合うって簡単なことじゃない。
明生の台詞「この世界の問題の多くは何が必要で何が不必要かではなく、単なる組み合わせや配分の誤りによって生まれているだけではないだろうか」
本当にそうかもなぁ。世の中にはこれだけたくさんの人がいて、ピッタリはまるピースを探すって、とても大変なこと。考えさせられることの多い作品です。

どちらの作品も切なくて、最後は心にぽっかりと穴が開いたような喪失感が残りました。結婚して何年も経つ人にも、読んで欲しい作品です。




タグ:読書感想文
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